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沿革
電気化学協会の創立
昭和8年(1933年)4月 社団法人 電気化学会の前身である「電気化学協会」誕生
その当時,わが国の電気化学工業は第1次世界大戦後に襲来した不景気による非常な苦境をようやく脱し,水力発電事業の進展に伴う安価な余剰電力の利用という社会的要請にも支えられ, 以後次の大戦まで続く第2次の勃興期を迎えようとしていました.この時代,昭和6年にわが国の技術によるアンモニア合成が完成し,同年電解マグネシウムが出現し,翌昭和7年には電融耐火 物が生産されています.続いて昭和8年には過酸化水素の生産,昭和9年には電解アルミニウムが工業化され,種々の電気化学産業の勃興期でありました.
4月11日 設立総会が東京・有楽町の電気倶楽部で挙行され,ここに学会と産業界との発意による「電気化学に関する学術の進歩発展とその工業の発展」を目的とした電気化学協会が誕生いたしました.
昭和8年(1933年)7月 会誌「電気化学」創刊号が刊行.
昭和10年(1935年)2月 通産省と文部省より社団法人「電気化学協会」として認可.
電気化学協会の歩み
戦前において,電気化学協会は誕生の日からわが国の電気化学工業の発展改良・新電気化学工業の創設という重大な責務を負わされることになりました.すなわち,余剰電力を利用したその当時のわが国の電気化学工業は非常に発達し,合成アンモニア,カーバイドおよび石灰窒素,鉄合金,カセイソーダ,炭素電極その他各種電気化学製品の増産は目覚ましく,やや遅れてアルミニウム,マグネシウムなどの製造が具体化されています.
戦後の復興にも電気化学協会は重要な役割を果たしてきました.すなわち,電気化学工業に関連した化学肥料一硫安も,戦災のために壊滅的打撃を受けた後,食糧増産のために急速に回復され,まだ連合軍の占領下にあった昭和24年には,早くも戦前の最高水準にまで達したといわれています.昭和27年頃になると電解ソーダエ業もようやく伸長し始め,昭和30年後半になるといわゆる「神武景気」と呼ばれる,戦後のわが国の工業,経済の隆盛期を迎え,電気化学の基礎的研究ならびに電気化学工業技術の発展・充実もその一翼を担っています.
本会創立以来の会誌名「電気化学」は,昭和36年の第29巻6月号から「工業物理化学」の副題がつけられたが,それは,単に電気化学の取扱い範囲を拡張して,工業に役立つ物理化学の諸問題を含めるといった定義どおりでなく,電気化学およびこれに関連した分野について新しい見方からの学問体系を構築しようとした意気込みによるものでした.
高度経済成長期の環境問題にも,積極的に取り組み,食塩電解(塩素・アルカリ電解)水銀法の非水銀化(昭和50年9月末)および水銀法のクローズド化(昭和49年9月末)に伴う隔膜法への転換からさらにイオン交換膜法の確立まで,産学協同の活動を行い,先駆けた完全非水銀化を達成しています.
更なる発展に向けて
電気化学会は,会員数も5000名を超え( 平成24年1月4日現在),年々増加しています.電気化学会では,会員から投稿された研究論文および依頼による解説・総説などを掲載する「Electrochemistry(電気化学および工業物理化学)」誌を毎月5日付けで刊行し,会員に無償配布しています.また,アメリカ電気化学会との定期的な合同大会の開催など,積極的に国際交流にも取り組んでいます.
電気化学は物理化学生誕の地として化学熱力学,反応速度論に基づく方法論を生み出すとともに,エネルギー化学・半導体材料・生物電気化学などにその領域を拡大してきました.21世紀に向けて,原子・分子レベルでの運動法則に基づいた電気化学の方法論が発展してきています.界面,分子間・分子内電荷移動プロセス,プラズマ・光プラズマプロセス,固体中のイオンプロセスと固体電気化学,有機分子・高分子化合物・非晶質材料の電極プロセス,生物電気化学プロセス等を舞台として電気化学のパラダイムが一層展開しつつあります.
同時に,電気化学の応用にはさらに期待が高まっています.これには,電池,燃料電池に代表されるエネルギーの変換・貯蔵デバイス,物質のセンシングデバイス,電子デバイスとその製造プロセス,先端材料と製造ブロセス,合成反応プロセス,電気化学的加エシステム,生物工学,エネルギー・環境などのシステム技術などが挙げられます.
これらのことに鑑み,平成8年,社団法人電気化学会へ改称いたしました .これらの先端プロセスの推進を,電気化学という学問をベースとして技術展開をはかることは我が国にとって不可欠な課題であり,「電気化学会」,今後益々その重要性を増すと考えられます.
また,社団法人電気化学会は平成23年12月27日付けで内閣総理大臣より公益社団法人移行の認定を受け,平成24年1月4日より公益社団法人として,新たに発足いたしました.
公益社団法人電気化学会歴代会長
()内は在任期間,所属は当時
- 加藤 与五郎(1933〜1934)東京工業大学
- 棚橋 寅五郎(1935〜1936)日本製錬(株)
- 片山 正夫(1937〜1938)東京帝國大学
- 鈴木 忠治(1939〜1940)東信電氣(株)
- 北脇 市太郎(1941〜1942)東京工業試験所
- 石川 一郎(1943〜1944)大日本人造肥料(株)
- 亀山 直人(1945〜1946)東京帝國大学
- 佐野 隆一(1947〜1948)(株)鉄興社
- 冨山 保(1949〜1950)横浜国立大学
- 永井 清次(1951)昭和電工(株)
- 石川 等(1952)日本カーボン(株)
- 井上 春成(1953〜1954)工業技術庁
- 野村 与曽市(1955〜1956)電気化学工業(株)
- 岡田 辰三(1957〜1958)京都大学
- 草野 義一(1959〜1960)日本軽金属(株)
- 武井 武(1961〜1962)慶應義塾大学
- 森本 貫一(1963〜1964)旭硝子(株)
- 岡 俊平(1965〜1966)東京工業高等専門学校
- 宮崎 輝(1967〜1968)旭化成工業(株)
- 石野 俊夫(1969〜1970)姫路工業大学
- 安西 正夫(1971)昭和電工(株)
- 鈴木 治雄(1972)昭和電工(株)
- 杉野 喜一郎(1973〜1974)東京工業大学
- 中山 一郎(1975〜1976)日本軽金属(株)
- 向坊 隆(1977〜1978)東京大学
- 山﨑 貞一(1979〜1980)TDK(株)
- 吉澤 四郎(1981〜1982)京都大学
- 久松 敬弘(1983〜1984)東京大学名誉教授・日新製鋼(株)
- 石川 敏功(1985〜1986)日本カーボン(株)
- 笛木 和雄(1987〜1988)東京大学
- 安福 眞民(1989〜1990)富士通(株)
- 春山 志郎(1991)東京工業高等専門学校
- 瀬谷 博道(1992)旭硝子(株)
- 増子 曻(1993)東京大学
- 小柳 俊一(1994)信越化学工業(株)
- 竹原 善一郎(1995)京都大学
- 水野 博之(1996)松下電器産業(株)
- 岸 富也(1997)慶應義塾大学
- 中根 久(1998)東京応化工業(株)
- 山内 繁(1999)国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
- 三浦 勇一(2000)(株)トクヤマ
- 相澤 益男(2001)東京工業大学
- 齋藤 俊次郎(2002)TDK(株)
- 藤嶋 昭(2003)東京大学栄誉教授・(財)神奈川科学技術アカデミー
- 棚橋 純一(2004)日本化学工業(株)
- 逢坂 哲彌(2005)早稲田大学
- 中村 道治(2006)(株)日立製作所
- 小久見 善八(2007)京都大学
- 依田 誠(2008)GSユアサコーポレーション(株)
- 太田 健一郎(2009)横浜国立大学
- 伊藤 東(2010)電気化学工業(株)
- 松永 是(2011)東京農工大学
- 松岡 英明(2012)東京農工大学
- 中江 清彦(2013)住友化学(株)
- 末永 智一(2014)東北大学